【研究発表】中年肥満男性の日常における血糖値スパイクと生活習慣の関連 (持続血糖モニタリングを用いた研究)
令和3年9月2日、当院 内分泌・糖尿病内科 科部長 岸本一郎が研究論文を発表しました。
1 研究結果の概要
糖尿病のない方を対象に血糖値スパイク(通常の健康診断や人間ドックではとらえきれない高血糖)と生活習慣の関係を明らかにしました。
2 研究内容の概略
糖尿病発症の高危険群である肥満を伴った中年男性(50-65歳)を対象に持続血糖モニタリングを行い、データが得られた36名の非糖尿病者の日常における高血糖と生活習慣との関係を調べたところ、血糖値スパイクは間食習慣および低身体活動と関係していることが明らかになりました。1日1回以上間食をされる方は1回未満に比較して14.5倍、研究期間(6日間)の最低歩数が2,500歩未満の方は2,500歩以上の方に比較して6.6倍、血糖値スパイク(血糖値200 mg/dL以上)の危険性が高くなっていました。また、間食習慣がある方は習慣がない方に比べてインスリン(膵臓から分泌されて血糖を下げるホルモン)の効果が低下している(インスリン抵抗性が高い)ことがわかりました。これらの結果は膵臓のインスリン分泌能力とは独立しており、内因性インスリンが十分保持されている方であっても認められました。肥満男性の日常において血糖値スパイクをきたさないために間食習慣の見直しと適度な身体活動の継続が必要であると考えられました。
3 図1
隠れ血糖値スパイクの1例。赤線は1日の血糖値の推移(縦軸は血糖値(mg/dL)を示しています。通常は140 mg/dLを超えない血糖値が、朝食抜きかつ遅い昼食後には200 mg/dLを超えて上昇しています。200 mg/dL以上の高血糖は、間食習慣が多い方、1日の最低歩数が少ない方に多く認められました。高血糖は膵臓の働きを悪くするため、さらに血糖が上昇するという悪循環から糖尿病の発症につながることが考えられます。
4 図2
200 mg/dL以上の高血糖は、間食習慣のある方、低身体活動の方に多く認められました。特に1日1回以上の間食習慣のある方、最低歩数が2,500歩未満の方は、そうでない方に比較して、それぞれ約15倍、約7倍隠れ高血糖の危険性が高くなっていました。
5 備考
本研究の結果は、2021年9月2日版英文専門誌*に発表しました。
*Nutrients 2021, 13, 3092. https://doi.org/10.3390/nu13093092